【大阪タワー☆Reserved】
良心の呵責に苛まれ続けながら、消したい傷と残したい想い出を綴るだけのブログです。



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うどん屋で見つけた人生の真実
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後輩、いや、もう既に友人と呼んだ方が正しいが、
その友人のお父さんが電鉄会社から脱サラして、
うどん屋さんを始めて1年以上が経った。

なかなか食べに行く機会がなかったのだが、
先週の金曜日に思い切って行ってみたので報告したい。


たとえ友人のお父さんであろうが、
うどんそのものに問題があったら
歯に衣着せずにヒトコト言ってやろうと目論んでいた。
こちらも仕事で何百軒と飲食店を取材してきたのだ。
プライベートでも数え切れないほど食べ歩いたし、
うどんの取材では高松を練り歩いたこともある。
それに僕のお婆ちゃんはうどん屋で働いていたので、うどんの味にはうるさい。
死んだ母もこよなくうどんを愛していたので、
うどんに関しては「血筋」みたいなものがあると思う。

僕は気に入ったお店ならいつまでも贔屓にするが、
気に入らないお店では料理を見ただけで旨いか不味いかぐらい自慢じゃないが判断できる。
昔は不味いものでも「全部平らげなければならない。失礼だ」
というライターとしての使命感があったので吐き出すほど食べていたが、
今では不味そうなものは、たとえ広告の仕事であっても一切口にしない主義だ。

僕は飲食するのに相応しくないタバコを吸うけども、舌にはプライドがある。
実はタバコを吸わないと、普段の自炊以外では舌が化学調味料や添加物などに過敏に反応してしまうのだ……。
タバコを吸っても反応しているんだけども。
とにかく友人のためにも一家言はする腹づもりで目的のうどん屋さんへ向かった。


到着して、店に入り友人の御両親に挨拶してから、
まず、『きつねうどん定食』を注文した。
きつねうどんは僕の好物というだけでなく、
うどん屋の良し悪しを判断する絶好の品だと思う。
油揚げと出汁と麺が一体となった時に初めて美しい味のハーモニーを醸し出す代物だ。

よく、うどん屋さんは
「まず、打ち立ての麺を生醤油でお召し上がりください」などと言うが、
そういうものはよっぽどひどい材料と打ち方・茹で方でないかぎり、
ある程度以上は旨いに決まっているし、
そういうものを食べたければ、うどんの本場の四国などへ行けばいいと思う。
いまや「豚丼屋」になってしまった『なか卯』でも十分だ。


定食にはゴハンかオニギリなどを選べることになっていたが、
迷わずオニギリを選んだ。
オニギリはそのお店の「良心」を反映する食べ物だと思う。
握り方や形だけでお店そのものの志がわかるというわけだ。


で、『きつねうどん定食』が出てきていきなり驚いた。
うどんは油揚げの大きさで麺が見えないほどで、
オニギリは白米じゃなく、鮭(シャケ)などを混ぜた、
かやくごはん的なオニギリだったからだ。
これでオニギリひとつをとっても手間ひまかけているのがわかった。
それにしても定食に付けるにしては贅沢すぎる。
とにかく先制攻撃で一本取られた。

そして、うどんに口をつけた。
「まずはスープや出汁から…」なんて、通ぶったことを僕はしない。
そんなことは麺に絡み付いてくる味でわかるはずだから。

麺を箸でつまんで「あれっ?」と思った。
注文の際に「太麺か?細麺か?」を訊ねられたので、
きつねうどんに合う太麺を頼んだはずなのに細かったからだ。
これが後で僕の思い違いだったと気づくのだが……。

「まあ、聞き間違いもあるさ…」と思って麺を食べた。
喉ごしや良し。噛みごたえ良し。風味良し。出汁との調和良し。
最初は「出汁が薄いかな?」と思ったのだが、
この太さの麺にはこの程度の出汁の風味が実にいい塩梅だ。

僕が思っている(極)太麺は、出汁の風味を強くしないと麺が負けてしまうし、
出汁が強すぎると少し下品な食い物になってしまう。
三重の名物で極太の『伊勢うどん』なんかがいい例だ。
あれなんか出汁というよりタレに近い。
『伊勢うどん』よりずっと太い麺を出す店が京都にあるが、
あれは悪く言えばキワモノ。


次に油揚げを食べてみた。
大きいわりには色が薄いので、味がほとんどついてないかと思いきや、
ジュワッと美味しい味付けが口に広がり、旨味を閉じ込めた逸品だった。
しかも、次に出汁を飲んだのだが、油揚げの味付けが出汁の風味を侵略していないのに驚いた。

僕が住んでた近所はうどん屋さんに恵まれていたのだが、
なかでも今では美味しいと評判で有名になってしまった
『やとう』というお店さえも、きつねうどんの油揚げが
出汁を甘くしてしまって残念だなぁと思っていたのに! (それがいいという見方もあるが)


ここで本題から外れるが、僕は『やとう』には開店当初から通っていた。
情熱をそそぎすぎて空回りし、1年ぐらいは繁盛していないお店だった。
立地条件の悪さもあったのだが、素人商売の感は否めなかった。
もちろん僕は実力を認めていたので通っていたのだが。
『やとう』は定食に工夫を凝らすことにより近所にいる人たちが通うようになった。
「自分の縄張りは教えたくない」という僕の気持ちとは裏腹に、
その後、雑誌で紹介されたために有名店になってしまった。
雑誌で紹介されると、また違う雑誌がそれを読んで取材するパターンが発生した。
読者もマスコミもミーハーで単純なのだ。
もちろん努力により実力も上げたので、今では大阪で5本の指に入るお店になったと思う。
逆にそうなってしまったために僕の足は遠のいてしまった。
混んでいる店は苦手なのだ……。
そのうえ、今でも僕の職業はお店の人には内緒にしている。
なぜなら、「構えられる」と辛いから。普段通りのモノを愉しみたいから。
その分、うどんのことではなくメニューのこととかを意見させてもらった。
真摯に受けとめてくださったようで、僕は少しほくそ笑んでいる。
今でも繁盛しているのは、お客さんの舌が鉛ではないということだろう。



本題に戻る。
きつねうどんの出汁は全部飲み干した。
出汁やスープが不味いお店なら、いっぱい残してあげるのが基本。
「なぜ残したのか?」のヒントを与えてあげるのが僕流なのだ。ちょっと偉そうに言うけども…。

定食は舌もお腹も満足できるものだった。
完成品だと言ってもいいのじゃないかな。
でも、一日に何軒も食って廻ってきた僕の胃袋はタフネス!
発情期のネコ並みに欲求を抑え切れないのだ。
結果、違うものも食べたくなってしまった。
そこで、ここはあっさり食べられる『ざるうどん』を注文。麺は太麺をオーダー。

「大盛りにしますか?」と言われたが、断ってしまった。
これが僕の失敗。
この店は、大盛りでも追加料金を取らないことを後で知ったからだ。
なんて良心的! というか素晴らしい!


注文した『ざるうどん』を来て慌てた。
少し細いと思っていたのが、実は太麺だとわかったからだ。
さらに細い麺があるということなのだ。
そこで『ざるうどん』は細麺でオーダーすべきだったと後悔。
太麺が好きな僕だが、さすがに2杯目はあっさりしたものが食べたかったから、
細麺にしておけばもっとあっさり食べられたのに!(笑)

とにかく食べてみた。
最初は薬味を入れないで、だんだんと入れていくのが僕としては愉しい。
蕎麦でも同じだ。
ココまで読んでくれた人なら、味は言わずともわかるでしょ?
とにかくおろし立ての生姜は、一服の清涼剤だ。
清々しい味に満足。


そこに追い討ちが来た。
「“ぶっかけ”食べてみはりますか?」って。
ここでひるむのは胃袋の鬼としてのプライドが許さないし、
ぜひ細麺を食べてみたかったので二つ返事で快諾。
『温玉ぶっかけ』を食べることになった。
これは、温泉たまごもお肉ものっていてスタミナ抜群。夏バテにピッタリ。
[↑なんだかお店の宣伝みたいになってきなぁ…(笑)]

しかも細麺なのであっさりと食べられる。
3杯目なのに苦にならない。
それにしても単純なメニュー名の品にさえも工夫が凝らしてある。
メニューをよく見ると、
『うなわさ丼定食』だの『月見うなとろ丼定食』だの
まだまだいっぱい食べてみたいメニューがあった。


お店の印象だが、外観は飾り気なく威厳さえもあるのに入りやすそうな店構え。
道路からでは見つけにくいのが難点なんだけど(苦笑)。
店内には、新聞や雑誌も充実していてテレビも置いてあるが、
大衆食堂のような下品さはない。むしろ素朴な気品がある。
おまけに座敷もあるので家族で来てもくつろげる感じ。


接客態度もセリフも感情がこもっていたので、
見ていて気持ちいいし、居心地がいい。お世辞抜きで。
僕はかつてモンゴル料理屋で働いていたので、
厨房のことや接客も多少は心得ているつもりなのだが、
友人のお母さんは「立ち位置」さえもちゃんと心得ておられた。
僕独りでおもむいたのに、幸せな気分になれた。


僕は常々、仕事というものは、
「人のためになる仕事」と「人を愉しませる仕事」の2つに分かれると明言してきた。
接客商売というものはモンゴル料理屋で経験しているが、
そこでは恩人のモンゴル人と共に「国際交流」という大義名分のもとで、
少しボランティア的な気分で働いていたのではないかとさえ思う。

仕事というのは、お金を稼ぐための手段であって、
生きる目的であってならないとどこかで書いたこともある。
でも、仕事が生き甲斐だという人は尊敬に値する。


そこでこのうどん屋さん。
「人のためになる仕事」と「人を愉しませる仕事」を同時にこなしているではないか!
舌や胃袋を満足させてくれたうえに、気分まで豊かにしてくれた。
おまけに接客している方も生き生きとして愉しそうだ。

これこそ人としての存在の意義ではないだろうか。
これこそ真実の人生のあり方ではないだろうか……。
僕がこんなに長い文章を書いて宣っているのは、
心から感動し、良い意味でのショックを受けたからだ。



脱サラしてお店を構えたという、これまでの御夫婦のストーリーの一部を
知っているからこそ、こんなにも感激しているのかもしれないが、
一見のお客さんの舌と心にも十分響く味だと確信している。
まだまだ改善したり進化してゆくであろうこのお店にまた来たいし、期待している。

夫婦というものはこうであるべきだと確信もできたし、
家族というものに懐疑的で嫌悪感さえ持っている
独身主義の僕から見ても「うらやましい」と思える御夫婦だった。

このお店の御夫婦のほんの一部であろうが、
真っ当な人生の一端を見せられ、そして魅せられた。
絶望していた僕の人生に一筋の光が見えた。

素晴らしいうどんと、そのうどんを提供する御夫婦、
そしてそんな御夫婦の子である友人と出逢えたことを誇りに思う。




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■自家製麺 うどんの『索べい』
住所:大阪府堺市中之町西1-1-10 堀ビル1階
電話:072-224-5139
営業時間:11:00〜14:30、17:00〜22:00
定休日:日曜、祝日



2005年07月25日06:45
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