【大阪タワー☆Reserved】
良心の呵責に苛まれ続けながら、消したい傷と残したい想い出を綴るだけのブログです。



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徳サン
 本日はどうやらホワイトデーというものらしくて、仕事場のボスが女子メンバーに「お返し」を渡しておりました。
 僕はといえば、バレンタインデーとやらにチョコレートをもらった際に、「お返しはいつになるかわからへんで!」と言っておいたので「お返し」を渡しておりません。先月からの予想通り、お金がない!からであります。
 まあ、そのうち金銭的に余裕が出てくればお返しするでしょう。30年分くらいまとめてな! 30年分のマシュマロをたっぷり食べるがいい。女子たちよ。

 ホワイトデーで思い出すのは、就職して社会人として初めて迎えた3月14日。
 僕は営業部に配属されていたんだけど、うちの部署によく出入りしておられたタクシー運転手を思い出す。徳サンと呼ばれたそのオッチャンは、いつもデカイ声でガナって、うちの部署のトップ(次長)を呼び捨てにしたり、ヘラヘラと女性社員に話し掛けたりしてダーティーなイメージだった。
 ホワイトデーに僕を呼びつけた徳サンは言った。

「○○(僕の名前)君、チョコのお返しせんなあかんから、ちょっと阪急(百貨店)行ってパンティー買うてきて!」

 唖然とした僕だったが、渋々、当時の得意先であった阪急百貨店の下着売り場(女性用)へ突入した。後にも先にも、単独で女性下着売り場にノコノコと入ったのはあの時だけだ……。どういう柄のものを選んだのかは恥ずかしくて憶えていない。

 その頃(会社員の時)は、社員寮として会社近くの大きなマンションに住んでいたのだが、末期癌の母が入院するようになってからは、見舞いのためほぼ毎日のように実家へ帰るようになった。徳サンは、僕に言った。

「なんかあったり、終電逃した時はいつでもワシを呼んでくれ。車とばすから。お金なんか要らへんで!」

 僕の実家までタクシーで帰ろうとしたら最低でも5万円以上はかかる。結局、この言葉に甘えることは一度もなかったけど、どんなに嬉しかったことか。母をもうすぐ亡くさねばならぬのに、ここに強い味方がいるってわかっただけでも本当に有り難かった。
 もちろん職場の仲間もみんな味方をしてくれたので、いつも僕は母の入院先へ通うための電車の中で、真っ暗な車窓を眺めながら人目もはばからず、声も出さず、滝のように涙だけを流していた。スーツを着た大男が涙する様子はさぞ気味が悪かったろう。とにかく嬉しい気持ちと、遠方の地で母と最期を迎えるために退社して仲間と別れなければならない辛い気持ちとが交錯して泣いていたのだ。

 僕が退社して数年後に徳サンは慢性的な心臓の病で亡くなったと聞いた。僕はその病のことさえ知らなかった……。ありがとうもさようならも言えなくてごめんなさい、徳サン。あなたのこととあなたの言葉は忘れません。パンティーのことも。
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