【大阪タワー☆】
良心の呵責に苛まれ続けながら、消したい傷と残したい想い出を綴るだけのブログです。



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憎むこと許すこと夫婦のこと


 母の姉(メーおばちゃん)と妹(ターおばちゃん)は、昔っから仲が良くなかった。ある時から会うたびに大喧嘩するようになってしまい、どちらともが好きな母は困ってしまった。

 メーおばちゃんは独身でほとんど盲目。実家で按摩師をしながら暮らしている。子どもを何度か産もうとしたことがあるらしいけど駄目だったらしい。僕は、メーおばちゃんの手術跡を銭湯で見せてもらったことがある。

「いっぱいヘソがあるやろ?」
「ホンマや。いろんなとこにヘソがあるなぁ」

 手術跡は凹んで本当にヘソみたいな形になっていた。誰の子を産もうとしたのかは僕の知らないところだ。ただ、独身で居続ける姉より先に嫁に行けぬと、三十代半ばまで母は嫁がずに実家であるおばあちゃんの家にいたそうだ。

 ある時、いつも断っていたお見合い話をなぜかOKして、周囲をびっくりさせた母は、皆が言うに「どこが良かったのかさっぱりわからん」状態の親父とあっさり結婚したそうだ。ちなみに親父はその当時バツイチ。

「能登川からいっぺん嫁さんをもろうたけど、1ヶ月で逃げて帰ったらしいわ」

 僕が高校生の時に、親父と大喧嘩した後の母が憎しみ吐くように言った。その時に親父がバツイチだと初めて知ったけど、動揺することもなく母に言った。

「その能登川の人、逃げて正解やな」
 溜め息をつくように母が言った。
「ホンマや。お母さん、馬鹿やなぁ……」

 姉と妹が憎しみ合うことにさえ疲れていたのに、親父ときたら途方もないくらい甲斐性なしのダメオヤジ。毎晩のように母が怒鳴り散らして親父を責めたが聞く耳なし。僕も弟も、母が肺癌になったのはほとんどが親父のせいだと思っていた。それどころか母を殺したのは癌細胞ではなく親父だと思っていた。

 まだ癌になるずっと前から母は、姉と妹が喧嘩になると姉であるメーおばちゃんの肩を持つようになっていた。

「だって、ターおばちゃんはええ旦那さんもええ子どもも2人いるけど、メーおばちゃんは誰も味方がおらんやろ」

 そう打ち明けてくれたことがある。メーおばちゃんは実家暮らしで、その頃はおばあちゃんも脳障害を持つおっちゃん(兄、独身)も一緒に住んでいたけど、癇癪(かんしゃく)持ちであるメーおばちゃんは誰にも嘆くことができぬ状態だった。ターおばちゃんは子どもら(僕のイトコ)にいろいろ愚痴をこぼせただろうけど。

 口では妹に負けてしまう姉の代わりに、母が何度も怒ったため、今度は母とターおばちゃんがほぼ絶縁状態になってしまった。僕は、それがとても残念で、

「僕はメーおばちゃんもターおばちゃんも好きなんやけどな」
 と母に言ったら、
「そんなんウチ(私)もや。でもしょうがないやろ」
 哀しそうな顔をして母が呟いた。

 
 末期の肺癌が発覚した後の年末年始あたりは、実家のおばあちゃんの家で過ごした母。おばあちゃんは、当時で言う痴呆状態だったので老人ホームにいたけれど、これが最後になるかも知れないと呼び戻して一緒に過ごした。
 
 抗癌剤治療で髪の毛が抜けてしまった母に、ボケてしまってたおばあちゃんは容赦なく訊いた。
「なんでハゲとるんや?」
 母は髪の毛が抜けたことも、おばあちゃんがボケたことも、自分が癌であることも相当苦痛だったに違いない。しかし、母の念願であった実母との暮らしが最後にできたのだから、あれはあれで良かったのかもしれない。


 いよいよ最後の入院のために、僕は同僚らの前で泣きながら会社を辞めて、母と倉敷の病院へ向かった。一生を費やす覚悟で母の側にいようと。
 運良く病院が持っている平屋の一軒家を借りられたので、僕はそこから病院通いをできた。モルヒネでかなり痛みが治まった母の状態を看ていたら、大丈夫なんじゃないかと、この土地で働いて母を看ながら一生暮らそうと心に誓っていた。

 親父や弟、姉であるメーおばちゃんはたびたび倉敷まで見舞いに来てくれたけど、ターおばちゃんは母が末期癌だとかそんなことは一切知らされていなかったので来ずまいだった。
 メーおばちゃんは、仕事以外は家族でさえ揉まない按摩師だったのに、母が「痛い」と言うとずっと背中をさすったりしてくれていた。


 そして、主治医に「(命は)持って春までですね」と言われた季節が訪れた。桜が咲いた確か母が亡くなる2週間くらい前だったか。親父がターおばちゃんとメーおばちゃんらをセットで倉敷に連れて来た。なんでも寡黙な親父が物凄い剣幕でターおばちゃんらを説得したそうだ。

 ターおばちゃんは、数年ぶりに会う母の横に立つなり目頭を押さえた。来ると知らされていなかった母は、途端に泣き顔になって抱きしめるように両手でターおばちゃんを掴んだ。僕はその光景を横目に見ながら病室から出て二人っきりにさせてあげた。
 そこでどんな会話があったのかは僕は知らない。ただ、後で母が親父に向かって言った言葉が忘れられない。

「あんた、初めてアタシにええことしてくれたなぁ」

 新婚旅行以外はどこにも行かず、連れてもらえず、ほぼ滋賀県周辺だけでずっと過ごした母。それまで何もしてやらなかった親父。母に泣き叫ばれながら怒鳴られる日々だった親父。僕は母が言ったあの言葉がある限り、心底憎かったけど親父を許す。
 本当なら小さなええことを積み重ねるのが夫婦というものなんだろうけど、臨終間際に大きな一発をキメた親父は偉かったと思う。そんな夫婦もありじゃないかな。最後の最期に親父に「ありがとう」と言えた母は良かったんじゃないかな。

 だから一旦は見捨てそうになったけど、遺書を残して消えた弟は親父を見捨てたけど、僕は死ぬまで親父の息子でいてやろうと思う。

 

コメント
この記事へのコメント
>まめたんさんへ
>まめたんさんへ
管理人のみ閲覧できるコメントでしたが、返信します。
どうも読んでくださってありがとうございます。
そちらもブログはちょくちょく読ませていただいておりました。
この日記はどう言ったらいいのかコメントに困るものだったにもかかわらず、ありがたいお言葉をくださって感謝します。
残り少ない人生、ちょっと頑張ります。
また来てくださいね!
2007/12/07 (金) 21:45:04 | URL | に.ら. #8H5b9g9o[ 編集]
>Yokoさんへ
いえいえ、そんなそんな。大したコメントでもなくすみません。
母にはいろんな思い残すことがあったでしょうが、この日記に書いた出来事が一番のネックになっていたと思いますので良かったです。
血が繋がっていることこそ難しい問題って多々ありますね。
肌の色の問題は、日本でいう同和問題に近いものがある気がします。僕の住んでたエリアではかなりいろいろありましたし。
家族って難しいですね。特に人間、特に日本人。
親孝行が美徳とされるのも、僕にはちょっと違和感があったり……。
2007/12/06 (木) 12:54:40 | URL | に.ら. #8H5b9g9o[ 編集]
に.ら.さん、こんにちは。クーちゃんへの追悼文にコメントありがとうございました。
お母様が最後にいい思い出を胸に旅立てたこと、お父様やおば様方にとってもよかったですね。
肉親との関係は、血がつながっているからこそ難しいことが多いですね。世の中にはいろいろな家族がいるけれど、どんな家族にも何かしらあるんだろうなと思います。こちらではそこに肌の色も加わり、複雑な問題を抱えている家族も多いようで、家族っていったい何?と思ってしまいます。
2007/12/06 (木) 08:09:17 | URL | Yoko #UbCtKfmc[ 編集]
>こんにちわわさんへ
えーっと。どのブログなのかわからないのですが……。
とにかく初めまして。
できればそちらのブログアドレスを載せていただくと有り難いのです。
「気になったことがあったら、紹介していこうってスタンス」ってオリジナルってことじゃなく、要するに新聞読みみたいなツッコミブログなんですか? いいと思うんですが、僕のブログは載せないでくださいね!
オール巨人さんのブログはたまに素晴らしいことが書いてありますよ。個人的にお薦めです。
またいらしてください。
2007/12/05 (水) 23:03:04 | URL | に.ら. #8H5b9g9o[ 編集]
はじめました。
こんにちわわ。

editor.jpを辿ってきました。
わっすのブログに来てくださいまして、ありがとうございます。

ネットサーフィンをしていて、おっこれは☆って気になったことがあったら、紹介していこうってスタンスで
更新しています。ブックマークみたらオール巨人の日記ってあるんですね。もうかなりのおっさんなのに、PCあやつるんです。吉本のIT革命や〜♪

失礼しました。
でわでは、また来ます。
2007/12/05 (水) 17:15:22 | URL | こんにちわわ。 #UL70/yxk[ 編集]
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